さいたま市・埼玉県人事委員会勧告について

地方公務員は民間企業の従業員とは異なり、争議権や団体交渉権が制約されています。その代償措置として、人事委員会による給与勧告の制度が設けられています。

給与勧告は、人事委員会の調査の結果により、公務員の給与水準と民間の給与水準を均衡させることを基本に行うとされています。さいたま市人事委員会は9月26日に、埼玉県人事委員会は10月20日に勧告しました。

さいたま市人事委員会勧告 →さいたま市人事委員会のHP

公民較差に基づく給与改定等

(1) 月例給
  • 行政職給料表の引上げ改定(平均改定率0.25%)。高卒初任給を4,000円、大卒初任給を3,000円、それぞれ引上げ
  • その他の給料表については行政職給料表との均衡を基本として改定
  • 教育職給料表(1)及び(2)については、埼玉県における改定状況等を考慮して改定
(2) 特別給
  • 支給月数を0.10月分引上げ、勤勉手当に反映 (4.30月分 → 4.40月分)
  • 再任用職員及び特定任期付職員は人事院勧告の内容に準じて改定

人事管理等に関する諸課題

(1) 健康で働き続けられる職場環境の整備
  • 長時間労働の是正
    • 健康で働き続けられる職場環境を整備するため、長時間労働の是正が急務。公務能率の向上、有為な人材の確保の観点からも実効性のある対策が必要
    • 本年10月から導入が予定されているタイムカードを適正に運用し、勤務を伴わない在庁やいわゆるサービス残業の発生を抑止していくことが大切
    • 教育職員については、「さいたま市立学校における働き方改革推進プラン」を着実に推進するとともに、その効果を検証し、職員の負担や多忙の軽減に資する取組を積極的に実行していくことが重要
  • ワーク・ライフ・バランスの推進
    • 育児や介護と仕事との両立支援を一層充実させていくことが必要。介護休暇の取得者が少ない原因を分析し、制度を利用しやすい環境づくりをより一層進めることが重要
    • 育児・介護により退職を余儀なくされる職員をなくすため、育児・介護を理由とする退職者の発生状況を継続的に把握し、必要な措置を検討していくことが必要
  • メンタルヘルス対策
    • 精神系の疾患による病気休職者が増加している要因や、メンタルヘルス不調の発生要因を分析し、分析結果を着実に改善につなげることが重要
    • ストレスチェックの集団分析は、職場環境の改善を行いやすい組織単位で行うとともに必要に応じて管理職員へフィードバックし、リスク因子の早期発見や職場環境の改善につなげることが肝要
  • ハラスメント対策
    • パワーハラスメントについては、業務上の指導等との違いが分かりにくく判断や対応が難しいケースも想定されるが、職場環境を悪化させる行為に対しては厳正な対処が必要
    • そのためにも、パワーハラスメントに該当する言動例を明示し、職員の理解を深める取組を進めるとともに、懲戒処分の指針にパワーハラスメントを行った場合の処分の標準例を明記するなど、ハラスメントを許さない明確な姿勢を示すことが大切
(2) 能力・実績に基づく人事管理の推進
  • 能力・実績に基づく人事管理を推進するためには、基礎となる人事評価制度を適正に運用し、任用、給与、人材育成等に適正かつ有効に活用していくことが重要
  • 人事管理が組織活力を維持・向上するための適切なものとなるよう、昇任昇格運用の在り方を含めて検証することが必要。その上で必要な見直しを行い、全ての職員が能力を十分に発揮できるよう、より一層取組を推進していくことが求められる
(3) 定年の引上げ
  • 情報提供及び勤務の意思の確認を着実に実施し、制度が円滑に運用されるよう取り組むことが必要
  • 高齢層職員の豊富な知識、技術、経験等を最大限活用することに加え、人材育成、適材適所の人事配置、若手職員の登用や新規採用者の継続的な確保等に配慮することが必要

埼玉県人事委員会勧告 →埼玉県人事委員会のHP

給与勧告のポイント

(1) 月例給
  • 行政職給料表の引き上げ改定
  • 初任給を始め主として若年層について引き上げ改定
  • 平均改定率:0.25%
(2) 特別給
  • 支給月数を0.10月分引き上げ(4.30月分→4.40月分)
  • 再任用者は0.05月分引き上げ(2.25月分→2.30月分)
  • 勤勉手当に反映

人事管理等に関する報告

(1)人材の確保及び育成
  • 人材の確保・育成
    • 人材獲得競争に対応できるような採用試験制度の検討や、早い段階から学生に志望の動機付けを図る等、取組を進めることが必要
  • 能力実績に基づく人事管理の徹底
(2) 誰もが活躍できる職場づくり
  • 女性職員の活躍推進
  • 高齢層職員の能力及び経験の活用
  • 障害のある職員の活躍推進
  • 会計年度任用職員の働きやすい環境づくり
  • 性の多様性を尊重した職場づくり
    • LGBTQの職員にとって働きやすい勤務環境としていくため、意識啓発の充実を図ることが重要。
(3) 働き方改革と勤務環境の整備等
  • DXの推進を踏まえた新たな働き方
  • 育児休業の取得促進など仕事と生活の両立支援の推進
    • 男性職員の育児休業取得のため、意識改革を図ることが必要。
    • 介護との両立支援について、令和5年度から高齢者部分休業制度が導入され、代替職員の配置が求められる
  • 総実勤務時間の縮減
    • 未配置及び未補充が発生する原因を分析し、対応策を早急に講じ、児童生徒への教育に支障を及ぼさないようにする必要がある。教採の倍率が近年低下傾向にあり、教育の質をいかに確保していくかが大きな課題。働き方改革は教育の質の確保の面からも極めて重要。働きやすい環境を整備することで、質の高い教育を提供していくことが求められる。
    • 働き方改革は待ったなし。公立小中学校においても、市町村教育委員会と連携して取り組む必要がある。
  • 性の多様性を尊重した勤務条件の整備
    • 多様な性の在り方の尊重と平等取り扱いの観点から、不利益が生じないようにすることが重要。
  • 心身の健康管理
  • ハラスメントの防止
  • 公務員倫理に基づいた意識と行動の徹底

さいたま市・埼玉県人事委員会勧告についての所見

埼玉県・さいたま市ともに、3年ぶりの引き上げ勧告でしたが、改善は若年層のみ。改定額についても、この間の物価高騰など生活悪化が進んでいる状況を改善させるには到底及びません。日常生活で必要とされる経費を保障するものでなくてはならないという原則「生計費原則」が生かされていません。改善が期待された会計年度任用職員の一時金に関しても、そもそも勤勉手当が支給されていないことから、何ら影響しないのです。

人事管理に関する報告では、「長時間労働の是正が急務(さいたま市)」「働き方改革は待ったなし(埼玉県)」とありますが、教育現場では、すでに様々な対策が講じられています。根本的に人手不足なのです。ただちに行うべきことは人員増です。

また、来年度より実施される定年引き上げに関して、高齢層職員の能力や経験等を最大限活用としながら、給与は7割とされています。それどころか、再任用の教職員はより低い待遇(約6割)で働いています。「同一労働同一賃金」の原則からも、大きく外れています。

一方、埼玉県人事委員会の報告では、これまでより一歩進んだ意見も出されています。

1つ目は、教育の穴の問題についてです。「未配置及び未補充」という言葉を使い、その問題について、「原因を分析」し、「対策案を早急に講じ、児童生徒への教育に支障を及ぼさないようにする必要がある」と、言及しています。

2つ目に、教採の「倍率が近年低下傾向」であることついても触れています。「勤務が長時間に及ぶ状況が教員志望者の動向にも影響している可能性」がある。だから、「働き方改革は教育の質の確保の面からも極めて重要」で、「働きやすい環境を整備することで、1人でも多くの優秀な教員を確保し、質の高い教育を提供していくことが求められる」と述べています。

これらは、この間の人事委員会交渉のとりくみにより、私たちの主張が表現に盛り込まれた成果と言えます。

さらに3つ目として、「性の多様性を尊重した職場づくり」「性の多様性を尊重した勤務条件の整備」について項目を立て意見を述べていることです。「同性パートナーに関しても事実婚と同じ取り扱いとすることについて検討」など、県独自の報告が見られます。

今後の埼教組のとりくみ

今後は人事委員会勧告を受け、その取り扱いをめぐる賃金確定交渉が始まります。知事・教育長宛の署名も始まります。
今後のとりくみが重要です。ご協力お願いします。

↓署名用紙はこちらからダウンロードできます。ご活用ください。