Q100 教職員が労働組合をつくる理由を説明してください

●戦前の日本社会では教師は「聖職者」として位置づけられ、何ひとつ不平を言わずに政府(行政)からの指示どおりに黙々と子どもたちの指導に当たることが当然視されていました。自らの労働条件の改善を求める権利は奪われ、国家(時の政権政党)の意に沿う教育を担うことが余儀なくされていました。戦後、「教え子を戦場に送った」ことを後悔・懺悔する教師が少なくなかったことは、当時の社会の異常な状況を端的に示しています。

●戦後になって教師(教職員)も働く者として、生活を守り、労働条件の改善を要求する権利とそのために労働組合を結成する(団結する)ことが、法的(憲法28条、地方公務員法52条)にも社会通念上も広く認められるようになりました。これらの事実は、戦前の反省を踏まえて、教職員の身分や暮らしの安定が図られなければ教育もよくならないこと、国の施策に対する批判の自由が保障されなければ人格の完成をめざすという教育の本来の目的が歪められることを、国民が広く認めたことを証明するものでしょう。

●教職員が労働組合を結成することの意義は、日々の身近な事実の経緯を見ても明らかです。賃金をはじめとした労働条件改善や教育条件改善を、一人で国や県知事等に持ち込んでも一般的には全く相手にされません。諸要求を実現する具体的な力は、根本的には団結した力による以外にありません。しかもその団結は一時的なものよりも、常時組織された状態を維持する方がはるかに優位に立つことは論を待ちません。幾多の攻撃や困難があっても労働組合(教職員組合)が組織され、活動が続けられてきた要因もそこにあるのです。

Q101 組合に加入すると特定の教育理念や政党支持を押しつけられることになるのでしょうか

●埼玉県教職員組合は、労働組合は次の3原則を保持しなければならないと考え、この立場から運動をすすめています。

①資本(公務労働者の場合は行政機関)からの独立

労働組合の中には、労働者の権利を守るためでなく、会社の意向を代弁させるために存在しているのではないかと思われる組合もあるようです。労働組合存立の大前提は、「労働者の利益を守る」ことにあります。このことは、「労働者の権利や利益さえ保護されれば後はいっさいお構いなし」という立場とは無縁のものであることも付言します。

②政党からの独立

労働組合は政党ではありません。政党は政治的信条を同じくする人々によって組織された集団ですが、労働組合は同じ要求を持つ労働者によって組織された集団です。したがって、労働組合においては、個々の組合員の政治的信条、政党支持の自由が保持されなければならないのは当然です。選挙にあたって組合員に特定の候補者のために活動させたり、労働組合が組合費等を充当することが許されてはなりません。

労働組合の中には、こうした原則を無視して、組合員に選挙活動を強制したり、政党への政治献金をしている組合もあるようですが、私たちはこうした態度を一貫して批判してきました。なお、組合員が一人の市民として、自らの政治信条にもとづいて活動をすることが保障されなければならないことは言うまでもありません。

③一致する要求にもとづく行動

労働組合は組織を構成する組合員の一致する要求あるいは大会における多数意見で決定した方針(要求)にもとづいて行動する組織です。しかし、みんなで決めた方針であっても、組合員はそれぞれの生活条件等が異なりますので、活動は理解と納得のもとにすすめられるべきです。一方、一致する要求といっても、教育実践にかかわる指導方法等について組織的統一を図るという方針は労働組合としてとるべき態度ではないと考えています。したがって、組合として特定の教育理念や指導方法を押しつけることは間違いだと考えています。

Q102 教職員の労働基本権について教えてください

●憲法が保障する労働基本権

(1)労働基本権の保障

 教職員には、労働基本権が全面的に認められることは、日本国憲法が労働基本権を特段の留保もなく、広く国民に保障していることに鑑みれば、争いのないところです。労働基本法を保障した憲法28条は、国民の生存権を定めた憲法25条、国民の労働の権利を定めた憲法27条を前提に、使用者との関係で経済的劣位に立つ労働者が、自らの経済地位を向上させ、人間らしい、文化的な生活を営むことができるようにするために、以下の4つの権利を保障しています。

 ①団結権

  労働者が団結して労働組合を結成し、あるいは労働組合に加入する権利

 ②団体交渉権(労働協約締結権を含む)

  労働組合が、その組織する組合員の労働条件あるいは労働組合と使用者との労使関係(組合掲示板や組合事務所の使用、団体交渉の際のルールなど)について定める労働協約の締結を目的として使用者あるいはその団体と団体交渉を行う権利

 ③争議権

  労働組合が、団体交渉において労使双方に対立が生じた場合(労働争議)に、自らの主張の実現を求めて行なう争議行為の権利

 ④組合活動の権利

  労働組合が、組合員の経済的地位の向上その他目的を達成することを目的として行う諸活動のうち、団体交渉、争議行動を除いた活動をする権利

  (ア)日常的な組織運営のための活動(各種会議・集会、連絡、組合費の徴収など)

  (イ)組合員その他にたいする情報宣伝活動(ビラ・ニュース等の配布、掲示板の利用等)

  (ウ)闘争的活動(大量のビラ貼り、就業時間中のリボン・腕章等の着用、職場内外の抗議活動)

(2)子どもの教育を受ける権利を担保する労働基本権

 教職員は、子どもの教育を受ける権利(憲法26条)、父母の子どもに教育を受けさせる義務を実現する第一次的な主体であり、父母、広く国民の付託にこたえ、子どもの教育を受ける権利を負っています。教職員は、教育の荒廃の現実に立ち向かい、活力ある実践にとりくんでいかなければなりません。そのために、教職員が労働組合に結集して、教育政策・教育制度について積極的に発言し、使用者である当局と交渉あるいは協議をおこなうことは必要不可欠といえます。

(3)公務員労働者の労働基本権を剥奪する現行法制

〈現行法による制約〉

 憲法は教職員に労働基本権を保障していますが、わが国では、1948年以降、以下に見るように、公務員の労働基本権が法律により大きく制約されてきました。

 ①団結権・組合活動の権利

  教職員には団結権・組合活動の権利が認められています。ただし、当局は、職員団体として人事院(国家公務員の場合)、人事委員会(あるいは公平委員会、地方公務員の場合)に登録の申請をし、登録を受けた職員団体からの交渉の申し入れがあった場合にのみ、その申し入れに応ずべき地位にたつものとされています。(国家公務員法108条の2、5の第1項、地公法第52条、55条1項)

 ②団体交渉権・労働協約締結権

  団体交渉は原則として保障されていますが、労働協約締結権は認めていません。(国公法108条の5第2項、地公法55条2項)ただし、地方公務員の場合には、書面協定制度(地公法55条9項)が設けられています。

 ③争議団

  教職員には争議権が認められていません。(国公法98条2項、地公法37条1項)争議行為を「そそのかし、あおる」行為については3年以下の懲役または100万円(地方公務員の場合は10万円)以下の罰金に処するとしています。

Q103 現行の労働基本権の解釈を説明してください

(1)団体交渉の対象

 地公法第55条1項は、地方公共団体は、登録を受けた職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに付帯して、社会的または厚生的活動を含む適法な活動にかかわる事項に関し、適法な交渉の申し入れがあった場合については、その申し入れに応ずべき地位に立つものとされています。

 教職員組合は、教職員の労働条件その他の待遇、当局と労働組合との間の集団的労使関係に関する事項(これは「義務的団交事項」と呼ばれる)であって、当局として処置することができる事項について、当局と団体交渉をおこなうことができます。

 参考までに義務的団交事項について、地方公営企業等の労働関係に関する法律7条は以下の通り定めています。

  • 賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項
  • 昇職、降職、転職、免職、休職、先任権及び懲戒の基準に関する事項
  • 労働に関する安全、衛生及び災害補償に関する事項
  • 前3号に掲げるもののほか、労働条件に関する事項

 これらについては、教職員の労働条件その他の待遇に関する事項について、さらにその対象を限定して、団体交渉の対象とするものといえます。教職員組合にとって大切なのは、教職員の待遇に関する事項であれば、狭い意味での労働条件に限定せず、広く団体交渉の対象とするとりくみをすすめることです。

(2)管理運営事項

 地公法第55条3項は、「地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項」いわゆる「管理運営事項」は団体交渉外であるとしています。この「管理運営事項」は、地方自治体の機関がその本来の職務または権限として、法令、条例、規則その他の規定、あるいは地方公共団体の議会の議決にもとづき、もっぱら自らの判断と責任にもとづいて執行すべき事項とされています。通常、行政の企画・立案・執行、定数・配置・人事権等がこれに含まれるとされています。

 管理運営事項に関して、しばしば現場で問題となるのは、教育委員会の定数配置問題、個別の昇任、配転、懲戒処分、校長による校務分掌の決定、教職員に対する勤務評価などです。これらの事項については、当局により、教育委員会や校長が責任を持って決定すべき事項であり、「管理運営事項」として、交渉の対象外であるとする扱いがなされることがあります。

 「管理運営事項」の多くは教職員の労働条件その他待遇に関連しており、これを団体交渉の対象から除外すれば、団体交渉権が空洞化することは避けられません。直接に教職員の労働条件そのものに該当するものではないとしても、労働条件その他の待遇に関する事項については、団体交渉の対象と解するべきです。当局が「管理運営事項」を盾に交渉に応じない場合には、粘り強く交渉に応じるように要求していくことが重要です。

(3)交渉の当事者・担当者

〈地方公務員法の立場〉

 交渉の相手方について、地公法55条4項は、当局側の交渉当事者を、「交渉事項について適法に管理し、又は決定することのできる」当局と定めています。その一方で、労働者側の当事者については、「登録を受けた職員団体」(地公法第55条1項)であり、交渉に臨む者を役員に限定し(同5項)、特別の事情のあるときは、例外として委任状を要件としてそれ以外のものも許される(同6項)としています。

〈労働組合側当事者・担当者〉

 しかし、教職員組合が登録を受けなければ団体交渉の権利を認めないことは重大な団結権の侵害です。また、ILO第87号条約2条、3条、5条にも違反しています。登録の有無にかかわらず、団体交渉権は認められると解すべきです。行政解釈は、交渉の申し入れが適法なものである限り、非登録団体であっても交渉に応ずることが望ましいですが、交渉すべき立場にあるというのが正しいといえます。実際には、教職員組合は、紛争を避けるために職員団体として登録していますが、職員団体登録制度は直ちに廃止すべきです。

 また、職場交渉においては、職場に組織された分会も当事者となると考えるべきです。分会を当事者と認めず、交渉に当たる分会長は職員団体の役員とはいえないとか、職員団体の執行機関から適法な委任を受けていないことを理由に団体交渉を拒否すること、交渉ではなく単に意見を聞く場とすることは許されません。

 交渉担当者を誰にするかは、本来、組合の自主的な判断に委ねられるべきです。それゆえ、地公法第55条6項にいう「特別の事情があるとき」の判断は労働組合の専権に委ねられていると解すべきです。また、交渉担当者への委任関係が明らかである限り、委任状による証明は不要というべきです。当局が労働組合側が立てた交渉担当者が地公法第55条5項あるいは6項の要件に該当しないことを理由に団体交渉を拒否することは、団結権を保障した憲法、ILO87号条約に反する不当な対応と解さなければなりません。

〈使用者側当事者〉

①国=文部科学省の関与領域が広範

 給与、定員、教育条件その他について、地方自治体は国の財政に大きく依存しています、教育制度についても、全国一律の教育制度の制定は、文部科学大臣の所管でおこなわれています。これらの事項については、団体交渉の当局は、これらの事項を所管する文部科学大臣になると考えられます。一方、労働組合側当事者は、各自治体の教育公務員を組織する労働組合を統轄する中央団体(例えば、全教、日教組)になるでしょう。

 しかし、国は、中央団体による中央交渉について、あくまでも団体交渉ではなく、要望を聞く場にとどまるというスタンスに立ってきました。そして、その根拠として、地公法第55条1項が団体交渉の当局側当事者を「地方公共団体の当局」としていること、地公法第53条4項が、職員団体の登録の要件として、同一の地方公共団体に属する職員をもって組織されていることを必要としていること、地公法第55条1項は、登録を受けていない職員団体からの団体交渉の申し入れには応ずる義務がないとしていることを根拠としています。

②地方自治体(県費職員)の場合

 県費職員の場合、任命権者は教育委員会であり、給与支払者は(都道府)県の首長(知事)です、また、学校設置管理は、県(高校等)と市(町村・義務制)です。

 教職員の勤務条件は、原則として教育委員会が所管し、執行する権限を有し(地教行法第23条)、教育長も教育委員会の指揮監督のもとに、同委員会の権限に属する全ての事務をつかさどるとされています(同17条)。

③校長、センター長など(職場交渉を大いに活性化しよう。)

 教職員が、労働者として日常的に労働を提供する場である学校職場において、自らの経済的地位や人間らしい生活の実現のために使用者側当事者と交渉をおこなうことはとても大切な意味をもっています。

 職場交渉における使用者側当事者は、学校教育法第37条4項により校務をつかさどるとされている(学)校長になります。校長は、教職員の校務分掌の決定、1週間の勤務時間の割り振り、出張の命令、校内研修の実施、有給休暇の承認、宿日直担当者の氏名、労働安全衛生法上の措置の実施などの権限を有しています。これらはいずれも現場の教職員の労働生活に重大な影響を及ぼすものです。それゆえ、校長を相手方として職場交渉をおこない、これらに関する組合員の要求を実現していくことは労働組合として当然の権利です。また、職場交渉は、職場における組合活動を教職員の目にみえるものとし、そのことがさらに組合活動の活性化、組織の拡大へと繋がっていきます。

 当局は、「校長中心の学校経営」というスローガンで、学校現場にたいする管理と統制の強化の柱として校長の管理権限の強化をはかっていますから、理屈からいえば交渉事項は拡大していくことになるはずです。しかし、校長に対する団体交渉の要求を、校長は、交渉事項について管理し、または決定する立場にないとして拒否する場合も少なくありません。(Q110参照)

 職場においては、校長側に対して、地道に交渉の実績を積み上げていくことがとても大切です。また、仮に校長自身に妥結権限がない事項であっても、妥結権限がある上級機関に責任をもって取り次ぎ、その実現に努力すべき立場にある事項については、校長が当局として団体交渉の当事者になると考えるべきです。

Q104 団体交渉の持ち方について教えてください

〈予備交渉〉

 労働組合に団体交渉権が保障されている以上、当局は、団体交渉の申し入れがあれば、誠意をもって速やかに応じなければなりません。予備交渉をするか否かは組合の判断に委ねられているものであり、予備交渉を経ていないことを理由に、団体交渉を拒否することは許されないはずです。

 しかし、地公法第55条5項は、交渉にあたっては、組合と当局との間において、「議題、時間、場所その他必要な事項」および交渉人員の数を予め取り決めたうえでおこなうとしています。教職員組合としては、予備交渉を経ない団体交渉の実施の実績を当局との間で築き上げることが大切です。また、予備交渉の実施の実績を当局との間で築き上げることが大切です。また、予備交渉をおこなう場合であっても、そこでの取り決めはあくまで一応の目安であることを明らかにして、当局が予備交渉での内容を団体交渉を打ち切る口実として利用しないことがないように十分注意を払うべきです。

〈交渉打ち切り〉

 地公法第55助7項は、交渉は、予備交渉における取り決めや、職員以外の交渉委員について委任状を要するという要件を満たさなくなった場合、または他の職員の職務の遂行を妨げ、もしくは地方公共団体の事務の正常な運営を阻害することになったときは、当局から打ち切ることができるとしています。

 当局が、この条項にもとづいて、団体交渉を打ち切ろうとする場合には、事実上の団体交渉拒否にあたると主張し、粘り強く交渉の場にとどまるよう働きかけなければなりません。

〈勤務時間中の交渉〉

 後述のとおり、地公法第55条5項は、同条に規定する適法な交渉は、勤務時間中におこなうことができるとしています。

〈交渉の場所〉

 後述のとおり、地公法第55条5項は、具体的な交渉に先立って、交渉の場所について、当局と職員団体があらかじめ取り決めることを求めています。しかし、交渉の場所は、それまでの労使の慣行にそって柔軟に決められるべきものです。交渉の場所について、当局側が従来の慣行を無視し、教職員組合の不都合な場所を一方的に指定してくるような場合は、実質的に見て団体交渉の拒否にあたるというべきです。

Q105 書面協定の効力について教えてください

〈書面協定の規定(地公法第55条10項)〉

 教職員組合に団体交渉権を認める以上、団体交渉での合意事項を書面化する労働協約の締結権が認められるのは当然というべきです。しかし、地公法第55条2項は職員団体の労働締結権を否定しています。これが違憲であることはいうまでもありません。もっとも、その一方で、地公法55条9項は「職員団体は、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の当局と書面による協定を結ぶことができる」と定めています。また、地公法55条10項は、書面協定について、当局および職員団体の双方において、誠意と責任をもって履行しなければならないと定めています。

〈書面協定の態様〉

 書面協定の態様について、地公法は特段の規定を置いていません。しかし、団体交渉の成果を可能なかぎり書面化するという観点からは、その形式にとらわれずに、広く書面協定として認めていくべきです。具体的には、以下の形式については、書面協定としての効力を認めるべきです。

 ①書面への連署

 ②組合の要求書と当局の回答書

 ③無署名議事録の確認

 ④口頭確認事項を当局が通達で流す

 ⑤口頭確認を組合が文書で公表し、当局がこれを黙認する。

Q106 団体交渉以外の集団的協議について教えてください

●交渉事項が「管理運営事項」であること、あるいは団体交渉の当事者性を否定して、団体交渉に応じない当局側の対応にたいして、憲法による団体交渉権の保障を実質化するために、教職員組合は、当局との交渉あるいは協議において、「意見表明」、「協議」、「合意を前提としない交渉」、「合意を目的とする交渉」といったさまざまな枠組みを、運動の情勢や当局側の対応を見極めて、選択してきました。

 こうしたとりくみについては、すべてを団体交渉・労働協約締結にむけて収束させるのではなく、現場における教職員組合と当局との到達点、双方の自主的な判断に委ねていくべきです。

Q107 学校長に交渉を申し入れたら、「話し合い以外は受けられない」 と拒否されました。交渉権はどうなっているのでしょうか

●憲法第28条は労働者の団体交渉権の保障を明記しています。教職員組合(公務員組合)の具体的な交渉権(交渉成立の要件)については、地方公務員法55条に定められています。その概要は次のとおりです。

・人事委員会に登録された団体であること。(埼教組は登録団体)

・交渉議題が勤務条件およびこれに附帯する社交的または厚生的活動に係る事項であること。

・当局の事務の管理および運営に関する事項は対象外であること。

・当局側(学校長)が交渉事項に関して当事者能力(適法に管理し、決定することができる権限)を有する議題であること。

・交渉議題、日時、場所、参加者数、その他必要事項について事前に取り決めておくこと。

・交渉は団体協約を締結する権利を含まないものであること

●上記のことから各分会(学校単位)が学校長に交渉を申し入れた場合、当然「交渉」として認められなければなりません。学校長が「話し合いである」と主張する根拠として挙げるのは、主に次の二点です。

第1は、埼教組は人事委員会に登録された団体であるが、分会は登録されていないとする理由です。しかし、埼教組の各分会は単一体としての埼教組の一組織です。したがって、埼教組が人事委員会に登録されていることをもって、当然地公法上の登録団体となります。

このことは1981年12月9日に埼教組と県教委の間で確認されています。もしこの論理をもって交渉を拒絶するのであれば、県人事委員会に登録されている埼教組(本部)や市町村の公平委員会に登録されている市町村教職員組合(単組)とは交渉を受けなければならないことになります。

第2は、交渉議題が何れも管理運営事項に属するものであり、交渉は成立しないとする理由です。当局は、管理運営事項の範囲をできるだけ拡大解釈しようとする傾向にありますが、地方公務員法は「社交的または厚生的活動を含む」適法活動も交渉事項と定めています。このことは、一般的に考えて相当広範囲のものが含まれると解することができますし、人事問題、学校の運営問題、教育条件整備に関する事項は何れも勤務条件に深く関わる事項です。

●以上のことから、安易に「交渉は認められない」とする態度は容認できません。なお、地方公務員法55条は「交渉は、勤務時間中においても行うことができる」と定めています。

Q108 組合活動の権利について教えてください

●教職員組合が、日常的な組合活動の自由を保障されることは、団結の目的である教職員の経済的地位の向上にとってきわめて重要です。また、学校における教育の直接の担い手である教職員が、父母、広く国民の付託にこたえ、子どもの教育を受ける権利を十分に保障し、国民主権の立場から、自主的、主体的に民主的教育を実践していくうえでも不可欠です。

 わが国においては、企業・事業場を単位に組織される企業内労働組合が大半であるため、労働組合の活動は、企業施設の利用、さらには勤務時間中の活動を避けていては十分に機能しない場合が多いといえます。しかし、このことは、反面で、使用者による施設管理権、労働者の職務専念義務との抵触の問題を生じさせます。教職員組合の場合にも、学校施設の利用、勤務時間中の組合活動が問題となる点は共通しています。

 教職員組合の組合活動の自由を認めることは、当局にたいして、施設管理権の制限に対する受忍や、職務専念義務の免除を当然の前提としているというべきです。しかし、現実には、地公法や地方公共団体が定める条例が教職員の組合活動にたいして広範な規制を及ぼしており、憲法で保障された組合活動の自由がかなりの程度、侵害されているのが現状です。

 以下では、組合活動にたいする当局の制約にたいして、教職員組合としてどのように対処すべきかを簡潔に述べていきます。

(1)勤務時間内の組合活動

〈職務専念義務との調整について〉

 教職員が、子どもと向き合い、子どもの教育を受ける権利の保障のために全力を傾ける義務(職務専念義務)を負うこと、地公法30条がこの当然の道理を定めた規定であることは争いのないところです。しかし、職務専念義務を絶対視し、集団的労使関係にまで押し広げるのであれば、職場における組合活動は窒息してしまいます。教職員組合に組合活動の権利が認められている以上、職務専念義務と組合活動の権利の調整が必要となることは当然です。

 この調整について、地公法第35条は、「法律又は条例に特別の定めがある場合」には、職務専念義務が免除されることを定めています。現行法上は、休職、停職、職員団体と当局との勤務時間内交渉(地公法第55条8項)などがあげられます。条例上も、休日・休暇に関する条例にもとづく休日・休暇、各自治体が地公法35条を直接の根拠として制定する職務専念義務の免除に関する条例にもとづいて職務専念義務が免除される場合(研修を受ける場合、厚生に関する計画の実施に参加する場合、交通機関の事故等の不可抗力の原因による場合、証人、鑑定人、参考人等として国会、裁判所、地方公共団体の議会その他の官公署へ出頭する場合、選挙権その他公民としての権利を行使する場合等)があげられます。なお、職務専念義務の免除は、県費負担教職員の場合、市町村の職務専念義務免除の条例により、市町村教育委員会がおこないます。実際には、地方公共団体の事務委任規定にもとづいて校長が職務専念義務免除の承認をおこなっています。

 この点でしばしば問題となるのが「研修」です。ここにいう「研修」は職務としての研修ではなく、職務以外の研修、たとえば教職員組合が主催する教育研究集会への参加です。当局は、このような研修について、職務専念義務を免除せず、参加については有給休暇を取得することを求めるのが通常です。

 しかし、教育公務員特例法(教特法)第21条は、教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならないとし、22条は教育公務員には研修を受ける機会が与えられなければならず、教員は授業に支障のないかぎり、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修をおこなうことができる、としています。また、1966年ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」は、社会の平和と進歩のための教育の役割を重視し、その発展のためには、「学問の自由」を有する教員が専門職として尊重されることを求めています。それゆえ、「研修」については、教員の自主的な判断を可能なかぎり尊重すべきです。

〈勤務時間内組合活動の慣行の効力〉

 教職員組合のたたかいの成果として、実際にも、勤務時間中の組合活動(たとえば、職員会議での組合文書の配布、放課後の職場会議、授業時間中の組合決定事項の伝達など)については、当局側が黙認してきたり、職場の慣行として一定の範囲で認められてきた経緯があります。これは、当局の側からみれば、勤務時間中の組合活動を受忍する義務を慣行上負担しているということになります。

(2)学校施設を利用した組合活動

〈組合事務所利用の権利関係〉

 職場における交渉あるいは長年の慣行により、一定の場所を組合事務所として利用することを当局が認めてきた場合、当局は組合事務所の利用を受忍する義務を負っています。当局が、合理的な理由なく組合事務所の利用を禁止することは許されません。

〈掲示板・学校電話・コピー機等の利用の権利関係〉

 これについても、組合事務所利用の権利関係と同一に考えられます。

(3)学校施設内での文書配布

〈施設管理権の及ぶ範囲〉

 組合における組合活動にとって、組合員あるいは未組合員に対する文書(組合ニュースや組合業務文書、宣伝ビラなど)配布は、団結の維持・強化に欠かせない活動です。ところが、文書配布については、ほとんどの地方公共団体は、施設管理権を根拠として、事前に当局の許可を得ることが必要であるとしています。

 職場に組織された労働組合が、いちいち当局の許可を得なければ学校施設内で文書配布ができないのであれば、労働組合の活動に重大な支障が生じます。労働組合に組合活動の権利が認められている以上、配布場所、配布方法、配布の時間帯等に鑑み、学校施設内での文書配布によって学校業務の運営に実質的に支障がないかあるいはあったとしてもごく軽微な場合には、当局は文書配布を受忍する義務を負うと考えるべきです。

 また、労使慣行上、配布が認められてきた場合(配布場所、配布方法、配布の時間帯、頻度についても労使慣行にもとづいて決定している場合もあるでしょう)に、当局が文書配布を受忍する義務を負っていることはいうまでもありません。

〈懲戒権の濫用〉

 また、当局が事前に許可を得ていない文書配布を問題にする場合には、まず労働組合との間で団体交渉をもち、配布のあり方について協議することが大切です。こうした手続きを経ずに施設管理権を具体的に侵害する可能性のない文書配布を事前に許可を受けていないことのみを理由に懲戒処分をおこなうことは、懲戒権の濫用として許されません。

(4)教育公務員にたいする不当労働行為の救済

 労働者にたいする団結権の保障は、団結権の侵害行為、団結権の正当な行使に対する使用者の介入や不利益の取り扱い(たとえば、組合に加入したことを理由に当該労働者を労働条件において差別すること)から労働者を救済する制度を要請しています。労基法第7条は、こうした使用者による行為を不当労働行為として類型化し、使用者が不当労働行為をおこなった場合には、都道府県労働委員会が労働者・労働組合の申し立てを待ってその救済にあたる不当労働行為救済制度を設けています。

 これに対して、地公法第58条は、地方公務員に対する労基法の適用を全面的に排除しているため、地方公務員には労基法第7条の不当労働行為救済制度は適用されません。しかし、地方公務員に団結権が保障されている以上、民間労働者と同じく団結権侵害行為にたいして救済が与えられてしかるべきです。

 地公法第56条は、職員団体の構成員であること、職員団体を結成しようとしたこと、または職員団体のために正当な行為をしたことのゆえをもって不利益な取り扱いを行うことを禁止しています。当局がこれらの行為を理由に懲戒その他その意に反すると認められる不利益な処分を行った場合、その処分を受けた職員は、人事委員会(公平委員会)に対して不服申し立てをすることができます(地公法第49条の2)。

Q109 学校内で分会会議を開いたり、組合掲示板設置を要求できる根拠は何ですか

●学校施設は、学校が学校教育の目的に使用するために設置されたものですが、次の場合は目的外使用も認められています。ひとつは法律または法律にもとづく命令にもとづいて使用する場合(公職選挙法にもとづく投票所や災害時の避難所等)、もうひとつは管理者または校長の同意を得て使用する場合です。組合の掲示板設置や分会会議のための教室使用の例は後者の場合ですが、いちいち許可申請などを提出することなく認められなければならないものです。

●労働組合の結成は憲法および地方公務員法で明確に保障されています。団結権が保障されていることは、その活動も保障されなければならないことを意味します。組合活動が学校施設の利用を必要不可欠としている実状からすれば、それは団結権保障を受ける活動ですから、その限りにおいて管理権者である校  長は施設を利用させなければなりません。当局が作成した各種解説書でも同様の見解が示されています。

●以上のことからすれば、分会会議開催や組合掲示板に関わる使用方法、態様について、学校運営に特段の支渉がない限り、干渉・介入する根拠は存在しません。学校によっては、「職員室は子どもや父母など不特定多数が出入りするところだから困る」という校長もいますが、憲法で保障された労働組合が存在  するのは当然のことです。万一、質問があれば、当校には組合があり、法律にもとづいて掲示板設置を許可していると答えれば済むことです。ちなみに埼玉県庁の主要な玄関口近くには県職員組合の掲示板が相当大きなスペースで置かれ、県民向けに置かれたものでないのに県民(子どもを含めて)の目に入るも  のとなっています。これは国の各省庁や地方自治体でも全く同様です。

Q110 教職員の政治活動・選挙活動について教えてください

●国民主権と民主主義を原理とする日本国憲法のもとで、政治活動・選挙活動の自由は最も基本的な権利であり、むやみに制限されてよいものではありません。ところが、政府は公務員に対しては、一般の市民を上まわる「制限」を加えています。行政側はこれを根拠にしながら、選挙の都度、公務員はいっさいの政治活動・選挙活動ができないかのように喧伝しています。正しくは、「教職員にも憲法上保障された思想・信条の自由、政治活動の自由が存在している。そうした市民としての権利に『一定の制限』が加えられているにすぎない」ということです。したがって大別すれば、

①国民全体におよぶ制約事項

②公務員に対してのみおよぶ制約事項

の2つに分けて考えることが必要です。

国民全体におよぶ制約事項

公職選挙法による制約であり、買収、供応、法定外文書配布などの禁止が盛り込まれています。戸別訪問もそのひとつですが、系統的・連続的に訪問して投票を依頼することが戸別訪問であり、選挙以外の用事で訪問した折に、 たまたま選挙の話しに及んで支持依頼することは戸別訪問には該当しません。このように何もさせないという立場からの拡大解釈には毅然と対処することが必要です。なお、公職選挙法に違反すると刑罰の対象となります。

公務員におよぶ制約事項

①教育職員以外の事務職員、栄養職員に対する制約

地公法36条によって一定の政治的行為が制限されています。詳しくは当該条文を正確に読みとることが必要ですが、ポイントは次の2点です。なお、これに違反した場合、行政処分の対象にはなりますが、刑罰の対象とはなりません。

ア、同条の規定は「政治的目的」と「政治的行為」を分けて記述し、「政治的目的」をもって「政治的行為」をした場合のみを禁じています。したがって、「政治的目的」があったとしても「政治的行為」に含まれなければ違反ではなく、その逆も同様と解されます。

イ、同条が規定する「政治的行為」の禁止は、当該職員の勤務地以外の自治体では禁止ではなく(一部を除く)、行うことができると定められています。

②教育職員に対する制約

次の2点による制約が加えられています。

ア、公職選挙法137条による制約です。同条は、「教育者(学校長、教員)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない」と規定しています。これは私立学校の教育職員にも適用され、公職選挙法適用ですから刑罰の対象となります。要は、「教育上の地位を利用して」と言うことですから、公文書で特定の選挙候補者を紹介したり、  成績評価をちらつかせながら支持依頼をおこなう等のことはできませんが、勤務時間外におけるビラ配布など単純な実務行為がこれに含まれないことは明白です。

イ、教育公務員特例法18条に定める制約です。同条は、公立学校の教育職員の政治的行為については地方公務員法(地公法)36条を適用するのではなく、国家公務員法(国公法)102条を適用すると定めています。その国公法102条は人事院規則(14-7)を適用するとしています。したがって、詳しくは人事院規則(14-7)を正確に読みとることが必要ですが、その仕組みは非教育職員(事務職員等)と同様で、「政治的目的」と「政治的行為」を区分して適用することとしていますから、前述の例で対応することが必要です。なお、違反した場合の罰則は、公立学校の教育職員の場合は国家公務員と異なり、行政処分の対象にはなりますが、刑罰は適用されません。

Q111 教職員の署名活動について教えてください

●日本国憲法は第16条で国民の請願権を認め、「請願法」を制定しています。

 教育条件整備拡充に向けて、署名活動を労働組合がとりくみ、その組合員として教職員が携わることは、労働組合法・地公法からして問題はありません。ただ、地方公務員法で、選挙に関する「署名活動」(例えば、特定の候補者の支持を求める署名活動)を組織し、自ら発起人や代表者となることは禁止されています。もちろん、選挙に関係のない書名や組合の要求の署名運動は選挙期間中であっても自由にできます。また、署名に応じることも自由にできます。

●埼教組が、1989年から続けてきた「ゆきとどいた教育をすすめる全国・埼玉」署名の活動をする自由ももちろん認められています。しかしながら、1999年頃から、県教委への匿名電話や県議会での一部議員などの質問によって、署名活動に対する妨害や圧力が繰り返されてきました。埼教組は、当初からこの攻撃に対する全面的な反論を次のように展開してきています。

①政治的中立性が損なわれるという批判について

 長い間続いている運動で証明済みのことであり問題ありません。20人以下学級を展望とした少人数学級の実現やどの子にもゆきとどいた教育という主張は、全国・県内の多くの国民・県民の共通の要求になっています。教員に対し直接適用される人事院規則14-7でも、この署名についてまったく該当しないことは当局の解説文書でも明言しています。そもそも「政治的中立」とは、戦前の国家神道を主柱とする教育への反省を基盤とし、政治教育・宗教教育…等々の教育的原則・公務員の職務における政治的中立などを規定したものであり、個々の教職員の信条・政治的行為を禁止しているものではありません。運動がひろがるにつれて、「ゆきとどいた教育をすすめる全国・埼玉」署名の請願事項についても全ての政党・会派の議員が紹介議員となるように変化してきています。もちろん特定の政党・政治集団を利することにならないことはあきらかです。

②地位利用をしているという批判について

 ①の立場に立てば、教育条件の拡充を求める署名を地域の父母・県民に知らせるとともに実現を迫ることは、教職員としても、県民としても当然の行為です。本来教育行政が進めるべき課題を、住民の要求運動として具体化した行為であり、そのすすめる主体である教職員が父母と共同して推進する場合、当然学校の関わりのある父母に依頼することは、運動の性格上当然のことです。

③「職務専念義務違反」(勤務時間内の署名配布など)であるという批判について

 埼教組(の支部・単組も含めて)として、署名活動について勤務時間内のとりくみをするという方針を掲げているものではありません。そういう点では、職務専念義務との関係で批判をしてくるものに対してきっかけを与えないように一定の配慮を行うことは必要です。当該学校において、当該学校の判断で具体化したことであり、署名・募金活動についてはあくまで任意であり、強制の範囲ではありません。

Q112 労働組合が共済活動をおこなっている理由について教えてください

●生活の安定は、組合員や加入者にとっては重要な要求です。ですから、生活を守る福利厚生活動の一つである共済活動は、労働組合の基本的な役割であり、労働組合の原点なのです。

●共済は、様々なリスクに対して、一定の地域や職域などの人々が協同して万一の場合の相互扶助を行う制度で、共済は、組合員の事故や病気による入院・死亡・火災・自動車事故などに対して給付を行うものです。

埼教組共済は、全教(全日本教職員組合)という上部組織のもと、埼教組(埼玉県教職員組合)が埼玉県で運営する教職員のための自主共済です。

●共済は、相互扶助を目的とするため儲ける必要は一切ありません。ですから、掛金は給付に必要な経費と運営に必要な経費があればよいのです。一方民間保険は、企業としての利潤追求を目的としていますので、この目的の違いが安い掛け金で、加入者の助け合いで生まれた充実した給付につながっているのです。