Q64 母性を保護することとジェンダー平等との関わりをどう考えたらいいのか説明してください

●母子保健法には「母性はすべての児童がすこやかに生まれ、かつ育てられる基盤であることにかんがみ、尊重され、保護されなければならない」と規定されています。「生命を生み出す」ことは当事者だけの問題でなく、次の世代を創り出すということでもあり、母性は社会的に保護されるべきものです。それは単に妊娠・出産に直接かかわる時期だけでなく月経開始時から閉経に至る期間の母性をさすといわれます。女子差別撤廃条約第四条にも「母性保護を目的とする特別措置を締約国がとることは、差別とみなしてはならない」と明記されています。

●命を生み出す母性機能をもつ女性が男性と対等に仕事をしていくためには、母性がハンディキヤップとならないようにしなければなりません。つまり、「母性保護とジェンダー平等」は二律背反的にとらえられるものではなく、母性保護はジェンダー平等の前提となるのです。母性保護が確立されて、はじめて男女が同じ基盤に立つといえます。

●ところが、自公政権は、口では「女性の活躍」と言いながら、差別の実態には目をふさぎ、ジェンダー平等に背を向け続けています。政権の内部から、「子どもを産まないのが問題」、「セクハラ罪という罪はない」など、公然と女性を差別し、セクハラ加害者を擁護する発言が繰り返されています。

 これらの根底には、侵略戦争と植民地支配の美化、男尊女卑と家父長制度、個人の尊厳の否定、個人の国家への従属という、時代逆行の思想があります。多様な人々の人権の尊重は、国際社会が求める普遍的価値です。

●長時間過密労働が常態化する学校現場において、母性保護の諸権利行使が困難になったり、産休代替職員が見つからない未配置・未補充などの問題がありますが、「母性保護はジェンダー平等の前提」を全教職員の合意にし、母性が大切にされる職場づくりをすすめなければなりません。そのためには男性教職員を含めた労働条件の改善が必要です。

Q65 雇用におけるジェンダー平等について教えてください

●男性の正社員にくらべて、女性の正社員の賃金は7割と大きな格差があります。女性の約6割がパートや派遣などの非正規労働者として働いており、正社員との不当な格差や差別が女性の低賃金、男女格差につながっています。

 “女性は残業や転勤ができないから責任ある仕事はさせられない”という理屈で差別が正当化されています。雇用におけるジェンダー平等は、誰もが働きやすく、生きやすい社会にしていく大きな力になるとともに重要な視点です。

●国連やILOなどでは、形式上は「差別」ではないようにしてあっても、一方の性に不利益な影響を与える行為を「間接差別」と規定し、違法な差別としています。ところが日本で「間接差別」とされるのは、募集や採用・昇進の時に「身長や体重、体力を要件」にするとか「転居を伴う転勤ができることを要件」とする程度です。コース別雇用管理で昇進機会や賃金に格差をつけるなど、働く場で横行している「間接差別」のほとんどが野放しです。

●公務員は国公法・地公法に性差別禁止が盛り込まれているとして、均等法の多くの部分が適用除外とされています。しかし、公務員も募集・採用は国公法・地公法に含まれないともいわれ、また現に、一般公務員の昇進・昇格差別が問題になっています。「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮」、「妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置」は、地方公務員は適用になります。学校は比較的平等が保障されている職場でもありますが、県内でも扶養認定などをめぐる問題やセクシャル・ハラスメント、妊娠はおめでたいことにも係らず、未配置・未補充の問題等から管理職に「学校運営のことを考えてくれ」などといったマタニティー・ハラスメントが問題に挙げられる職場も少なくありません。罰則規定を盛り込むなど均等法をいっそう実効性のある法に改正するとともに、職場でジェンダー平等を推進する具体的なとりくみが重要です。

●「家族のことは女性にまかせて、男性は夜遅くまで働く」長時間労働の背景に「育児や介護は女性の仕事」という性別役割分担論があります。

育児や介護など家族的責任を持つ労働者は、男女を問わず、時間外労働・深夜労働・単身赴任や長時間通勤を伴う転勤を原則禁止し、看護休暇や育児介護休業制度を拡充するなど、男女ともに家族的責任を果たすことを保障する、働くルールの確立をめざしてとりくみを強めることが重要です。

Q66 ハラスメント対策はどうなっていますか

●国連は、セクハラ、性暴力、DV等を「女性に対する暴力」と規定し、女性差別撤廃のために対策を抜本的に強化すべきだと締約国に示しています。日本はこれらの法整備と被害者への支援体制がきわめて不十分であり、早急に改善することが求められています。

●埼玉県教委は「県立学校におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する要綱」を制定し、1999年9月1日より施行しました。さらに2011年2月1には「県立学校におけるパワー・ハラスメントの防止等に関する要項」を、2017年1月1日には「県立学校における妊娠、出産、児童又は介護に関するハラスメントの防止等に関する要項」を施行しました。これらの要綱の中には、校内に苦情相談をうける相談員を設け、相談員からなる委員会を置くこと等がもりこまれています。それぞれ臨時・非常勤も含む全ての職員を対象としています。

●2020年度現在、全ての市町村で3つのハラスメントに関する要項が策定されているとともに、相談窓口が設置されています。

●2019年度の全教青年部調査では、青年教職員の30%(女性は35%)が職場でハラスメントを「受けたことがある」と答えています。ハラスメント(若い人や女性への「仕事の押し付け」「過剰な叱責」、「陰での悪口」など)は、勤務の過密さ・ゆとりのなさによって引き起こされることもあると考えられます。マタハラ(3年間は妊娠しないようにといわれたなど)は、人員不足が原因です。ハラスメントがない職場にするためには、啓発をするとともに、正規職員を増やし、学校運営にゆとりをつくることが大切です。

Q67 結婚後、職場で別姓を使うことができますか

●戦後、「家」制度が廃止され、民法が1947年に改正されましたが、夫婦の氏については同じ姓を名乗る夫婦同氏制度とされました。女性が改姓する場合が圧倒的に多く、男女平等を求める運動の高まりや仕事上の不都合から氏の変更を望まない人も増え、夫婦別氏制度を求める運動が広がりました。

●結婚したら、どちらか一方の姓を名乗らなければならない―夫婦同姓を法律(民法)で義務付けているのは世界で日本だけです。姓を変えるのは96%が女性です。外国人との結婚や離婚の際の姓は選択できますが、日本人同士の結婚では同姓が強制的義務とされたままです。日本も批准している女性差別撤廃条約第16条の「夫及び妻の同一の個人的権利」には、姓を選択する権利も含まれます。女性差別撤廃委員会から再三にわたり法律改正の勧告を受けています。国民は、選択できる社会、個々の人格や多様性が認められる社会を望んでいます。最高裁も「氏名は、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴」(1988年)と判断しています。

●埼玉県は全国に先駆けて、1997年に「埼玉県職員旧姓使用取扱要綱」を、県教委は「埼玉県立学校職員旧姓使用取扱要綱」を制定し、婚姻や養子縁組等により戸籍上の氏を改めた職員が希望すれば、旧姓が使用できることになりました。施行前に改姓した職員も対象となります。

●この対象となるのは、県職員や県立学校教職員です。市町村立学校職員の服務監質権は市町村にありますので、各市町村に旧姓使用を認めさせることが必要です。県教委は「埼玉県立学校職員旧姓使用取扱要綱」制定を各市町村に通知しています。

●「埼玉県立学校職員旧姓使用取扱要綱」及び通知のは次のようです。

①旧姓を使用できる文書等

職員録、座席表、回覧用紙、校務分掌、名札、住所届、出勤簿、着任届、職専免願、休暇届、休暇願、欠勤届、遅刻(早退)届、研修承認願、兼職承認願、復命書、休日・時間外勤務命令簿、事務引継書、週休日の指定簿、旅行命令簿、起案文書、支出負担行為決議書(回議、合議、決裁の押印)及び  支出命令書(回議、合議、決裁の押印)、検査調書、これ以外に法令等に基づかない文書等で校長が認めるもの。

その他一学校日誌、職員名簿、時間割表、生徒出席簿、学校要覧、職員会議録、宿日直日誌、職員動静表、海外旅行承認願、各種校務報告、事務日誌、  通知票、生徒・保護者への通知等、各種研修会・研究大会への申し込み等、職場での呼称及び名刺

②次の文書等については戸籍上の氏とする。

服務の宣誓書、職員証(事務職員等)、退職願、専従許可願、育児休業(部分休業)承認請求書、人事異動及び昇給等の発令書、人事異動記者発表、給与明細書、契約書、共済及び互助会関係事務、公務災害事務

③旧姓使用を希望する職員は、所定の様式の「旧姓使用願」を提出する。

Q68 生理休暇について説明してください

●月経は生理現象で女性の性機能の状態を表し、その順・不順はその人の機能のはたらきを反映します。生理と出産は関係が深く思春期のころから母性を大切にしなければなりません。生理の時は、自分では苦痛を自覚しなくても疲労したときの血液に多く含まれる物質が炭鉱で徹夜作業をしたときほどの量であるという学者もいます。だから自分に苦痛がなくても十分休養をとり、仕事  から解放されて精神的にも肉体的にもゆっくり休む必要があります。生理時の過激な労働は子宮位置の異常をおこしやすく、不育症や不妊症の原因ともなっています。生理休暇をとらずに労働した人の方が、異常出産・未熟児・難産が多いという調査結果もあります。

●生理休暇規定があるのは世界でも数少ないのですが、日本は欧米諸国より長い労働時間の上に残業も多く、労働密度もずっと高いのです。男女別の休養室もない職場環境、遠距離通勤と異常な混雑、病気の時でさえ気楽に休めない職場環境など、諸外国では考えられない特別な状況があります。いま大切なことは、生理休暇をきちんととれる職場をつくることです。生休が取れる職場は、年休もとりやすい職場なのです。

●生理休暇は1回につき3日の期間内で必要な期間をとることができます。続けてとる場合は、勤務を要しない日も日数に合まれます。時間単位でとることもできます。

●医師の診断書は不要です。

(学校職員の職務時間、休暇等に関する規則第12条9)

Q69 妊娠・出産にかかわる休暇について教えてください

(1)産前・産後休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条1項)

(女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律)

●産前休暇は、出産予定日を含め前6週間に当たる日からです。多胎の場合は出産予定日前14週間です。

●産後休暇は、出産の翌日から8週間となっています。出産日が遅れた場合は、出産の翌日から改めてカウントされますので、遅れた分だけ産前休暇が延長されることになります。

●産前・産後休暇に妊娠傷害休暇2週間、加算休暇2週間を続け、最長18週(多胎の時26週)の休暇をとることができます。

●労基法66条により、産前休暇は本人の請求により、産後休暇は本人の請求がなくとも使用者はこれを与えなければなりません。(産後6週間経過後、本人が請求し、医師が支障のないことを認めた業務に就かせることはできます。)

●妊娠44か月以上(28日で1月、4か月以上とは85日以上をいう)の分娩(早産・ 死産・流産・人工中絶)の場合に、産後8週間の休暇をとることができます。また、産後加算休暇をうけることができます。

●産前・産後休暇の期間中は産休代替教職員が配置されます。●産前休暇に入る直前及び産後休暇直後(育児休業をつづけてとった時は育児休業直後)に各1日、教育内容や事務引き継ぎのため代替者が配置されます。

●2014年度より、産前産後休暇取得期間中も育児休業中と同様に、申し出により共済組合および互助会の掛金が免除されることとなりました。

(2)加算休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条1項)

(女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律)

●産前・産後休暇に続けて、2週間とることができます。産前及び産後に分割して加算しても差し支えありません。産前または産後の休暇願の提出により承認され、出勤簿は「産休」となります。

●加算休暇の期間中は産休代替教職員加配置されます。

(3)妊娠傷害休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条1項4号)

●つわりや妊娠中の傷害等で妊娠期間を通じて14日を越えない範囲でとることができます。母子手帳等で妊娠の事実を示すとともに本人が妊娠に起因する障害のため勤務が困難であることを口頭または文書で申し出ます。

●1日単位に分割しても、2日以上連続してもよいのですが、事実上1時間単位でとっても1日として計算されます。妊娠に起因する障害があれば、産前休暇または加算休暇に連続してとることができます。

●産前休暇、産前加算休暇につなげてとった場合は、名称は「産前休暇」と なり、産休と離して継続的にまたは1日ずつ分割してとる場合は「傷害休暇」という名称になります。

●産前休暇につなげてとった場合は産休代替教職員が配置されます。

(4)通院休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条2項)

●妊娠中は、自覚症状がなくても、いろいろな病気にかかる割合が普通の時よりも多いと言われており、定期的に医師などの診断をうけることが不可欠です。通院休暇は、妊娠中又は産後1年以内の教職員が、医師等の保健指導・健康診断を受ける場合に保障されている休暇です。

●妊娠中及び産後、保健指導・健康診査のために1回につき1日の範囲内で、その都度必要と認められる時間を次のようにとることができます。

妊娠23週まで・・・4週間に1回

妊娠24週から35週まで・・・2週間に1回

妊娠36週まで出産まで・・・1週間に1回

出産後1年まで・・・1年以内に1回

※医師の特別の指示があった場合は指示された回数

●請求の際、母子健康手帳を休暇願とともに提示します。妊娠の事実を確認できる証明書でもかまいません。なお、妊娠確認のために診察を受ける場合も、この休暇が適用されますが、妊娠していなかった場合は年休となります。

(5)通勤緩和休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条1項3号)

●通勤に利用する交通機関の混雑から、母体の健康持続をはかるために実施されるようになった休暇です。

●通勤時間の始め又は終りにおいて、1日につき1時間以内の勤務時間の繰上げ・繰り下げの休暇を取ることができます。

●1か月単位に、妊娠の証明ができる日から、産前休暇の前日までを一括して願い出ることによってとることができます。

●医師の診断書はいりません。母子手帳に「通勤に注意」などの趣旨を記入してもらうとよいでしょう。母子手帳に記入がなくともとることができます。通勤ラッシュを避けるため、自家用車・原動機付自転車・その他の原動機付交通用具利用者も混雑する場合は該当します。

(6)出産補助休暇

(学校職員の勤務時間、休暇等に関する規則12条1項18号)

●妻の出産(妊娠4カ月以上の分娩)にあたり、夫である男性職員は3日の範囲内でその都度必要と認められる期間、休暇がとれます。

●出産当日からおおむね2週間以内にとることを原則としています。入院の際の付添い、出産時の付添い、出産に係る入院中の世話、出生届提出時等に使います。

●連続して3日とる場合、休日等を含む場合は、休日の前後に分けて請求することもできます。1日単位でも1時間単位でも取得することができます。

●1時間を単位とする場合は、7時間45分をもって1日と計算をします。

(7)男性職員の育児参加のための休暇

(学校職員の勤務時間、休暇に関する規則第12条1項19号)

●学校職員の妻が出産をする時、その出産予定日の6週間(多胎妊娠のときは14週間)前の日から出産の日から8週間までの期間に、当該出産に係る子または小学校の始期に達するまでの子を養育する職員が、これらの子を養育するため勤務しないことが相当であると認められる期間休暇がとれます。

●これらの子と同居している必要があります。

●1日単位でも1時間単位でも取得することができます。●1時間を単位とする場合は、7時間45分をもって1日と計算をします。

Q70 妊娠中の業務軽減についてはどうなっていますか

●妊娠中の女性教職員が請求した場合には、校長は、他の軽易な事務に転換させなければならないことになっています。妊娠がわかったらみんなに知らせ、業務軽減を請求しましょう。

●学校の場合、遠足への付添、泊を伴う行事、プールの水泳指導、体育の実技  指導などの業務は転換させる必要があります。また、高い階の教室は避けるとか、家庭訪問を学校での個人面談にする等の配慮も必要です。分会で本人とよく協議し、対策を講じさせることが大切です。

(労基法65条3項)

●妊産婦が請求した場合、使用者は1週間について38時間、1目について7時間45分を超えて労働させてはならず、時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならないことになっています。

(労基法66条)

●妊娠中の教職員が母子保健法に規定する健康指導または健康診査に基づく指導事項を守るため適宜、休息または補食する場合、その都度必要と認める時間について、服務専念義務が免除されます。その際、母子健康手帳等によって確認を求められますが、その際プライバシー保護には十分留意することになっています。

(服務に専念する義務の特例に関する規則2条13号)

●教育内容や事務の連絡を行うために、産前休暇に入る直前に1日、及び産後休暇終了直後(続けて育児休業を取った人は育児休業終了直後)に1日、育児休業に入る直前に1日、及び育児休業終了直後に1日、引き継ぎ日として代替者が配置されます。

●連絡引き継ぎに該当する日が長期休業日、各学期の始業・終業日にあたる時も代替者が配置されるようになっています。

(配置事業実施要項)

Q71 妊娠教員体育代替制度について説明してください

●1981年に「埼王県公立小学校妊娠教員体育代替非常勤講師事業」が小学校で実現し、その後改善され、1998年に中学校でも実現しました。体育授業の教育水準維持と妊娠者の母体保護を目的とするものです。

●小学校の教諭及び中学校体育科の教諭が妊娠した場合、母性保護のため、体育の授業を担当する非常勤講師が措置されます。

〈小学校〉

2020年度埼教連交渉によって、体育を行う教諭の妊娠者1人に対して、非常勤講師がこれまでの週5時間から週6時間措置されます。(2015年度までは18学級以上という学級要件がありましたが、2016年度長年の要求が実現し学級要件がなくなりました。)

〈中学校〉

体育科教諭が妊娠した場合週13時間非常勤講師が措置されます。

●該当者は母子手帳または医師の診断書の写しを校長に届け、「妊娠教員体育代替非常勤講師」の配置を求めます。

●2019年度埼教連交渉において、本務者が休暇等を取得し勤務しない場合であっても、代替者については勤務配置ができるよう配置要件が拡大されました。

Q72 セクシャリティ(性のあり方)について教えてください

●2019年、同性婚を容認することを求める訴訟が全国4都市で始まりました。同性パートナーシップ条例・制度をもつ自治体は全国20自治体(2019年4月現在)に広がりました。日本経団連が実施した「LGBTへの企業のとりくみに関するアンケート」では、90%以上の企業が「性的少数者に関して社内の取り組みが必要」と回答しています。セクシュアル(性的)マイノリティに対する差別をなくすための運動が、社会を大きく動かしています。

●もともと①身体的性(身体的構造における性。多くの場合、産まれてきたときの外性器によって判断される)、②性自認(自分の性をどのように認識しているかということ)、③性的指向(ひろい意味ではどんな性を好きになるかということ)、④性表現(自分のありたい性をどのように表現するかということ)において、人は極めて多様です。

●私たちのこれまでの社会では、性は「男」または「女」と二分され、性的指向が異性に向いていることが前提となっています(同性愛中心主義)。同時に、性自認と身体的性が一致していることが「当たり前」だとする考え方(「シスジェンダー」といいます)も浸透しています。

●①身体的性、②性自認、③性表現が一致していて、③性的指向は異性に向いている、これがセクシュアルマジョリティ(性的多数者)であるとされています。

●しかし、①②④が一致せず、③が同性に向く場合もあれば、どちらにも向かない場合、逆にどちらにも向く場合もあるなど、何通りもあります。④性表現も①②と一致しない場合があります。セクシュアルマイノリティは、セクシュアルマジョリティ以外のセクシュアリティ(性のあり方)のことをいいます。

●セクシュアルマイノリティに対する差別は、女性差別と同じように、「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」というジェンダー規範から生まれてくると考えています。そして、そのジェンダー規範は、資本主義社会のなかで、男性は強く、長時間労働に耐え、家計を担う存在として、女性は家事育児に専念し、「家」を守る存在として、一律に規定付けられていました。そのような社会の中で、結婚は、将来の社会を支えるために、子どもを産み、人口を増やしていくための営みと位置づけられがちです。

●このような社会では、異性愛が大前提ですし、身体的性に規定された性自認や性的指向、性表現を事実上強制されることになり、セクシュアルマイノリティの方にとって非常に生きづらい社会になります。同時にセクシュアルマイノリティではなくても、身体的性にふさわしいとされる外見やしぐさが異なる人、結婚したくない人、結婚しても子どもを産みたくないと考えているカップルなどにとっても、息苦しい社会です。セクシュアルマイノリティに対する差別は、セクシュアルマイノリティの当事者だけの問題ではありません。

 また、民主主義国家の前提として、多様な意見が反映されるように、政治分野にもダイバーシティ(多様性)が必要です。

●近年、学校の制限においても、男子はズボン、女子はスカートという固定概念が見直される学校が広がりつつありますが、男女二分法を多用する学校文化は今もなお根強く残っているのが現状です。